なぜ今、アナログフィルムなのか。理由は明快で、私は“一点物の手仕事”として写真を作りたいからです。デジタルやAIによって画像の出自が曖昧になりつつある現在、工程を自分の手で積み重ねること—撮影、測光、用紙選び、コーティング、露光、ネガの設計と現像—は、作品と作者のあいだの責任と人間性を可視化します。偶然や個体差も含めて、その痕跡こそが作品の固有性になると考えています。
主に用いるのはプラチナ・パラジウム(Pt/Pd)。コットン紙に感光液を刷毛で含浸させ、紫外線で反応させることで、像は乳剤層ではなく紙の内部に直接生じます。これにより表面反射が抑えられ、マットで柔らかな描写と豊かなトーン、紙の中に沈むような反射の少ない黒。紙の肌理が生きるため、人物・犬・花といった“生きもの”の気配や静けさを自然に伝えられるのが魅力です。
私は東京を拠点に、撮影から最終プリントまで一貫制作で臨みます。自分の手で作るからこそ作品に宿る人間性を信じ、アナログフィルムとPt/Pdで写真を作り続けます。受注撮影・プリント制作のご相談も承ります